管理地のこのシラカシは、キクイムシ(穿孔性害虫)の加害を何年か前に受けている。枯れ枝が多かったのでロープで登るのは控えた木である。元気な木ではないが、枯れているかと言えばそうではない。被害の後も幹は肥大成長をしている。黒い食痕に沿って縦に溝状に凹みができているのがその証しだ。
木の根元を見ると、新しいフラスが見られず、数年前に食害は終わっているらしい。枯れ枝は多いが、林冠にも葉を展葉している。林冠に塞がれて陰葉の梢先もある。カシノナガキクイムシによるナラ・カシ類の枯死は、現在、大問題で見つけたら、直ぐに伐採することを奨励している。
ところが、「ちょっと待て」である。危なかった時期もあっただろうが、この木は回復している。天空を奪われたら枯死するおそれもある。この微妙なバランスも、森林生態系の見どころだ。
不思議なことは、同じくらいの太さ・高さで、この木より元気のないシラカシが、全く加害されていない。個体差もある。環境の微妙違いもある。一様ではない。それでいて樹木同士は、食害の情報を一瞬にして共有して対策を立てているそうだ。
伐採して攪乱するのはやめた方が良さそうだ。